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「アイドルのことを全く知らない状態でアイドルになりました」 加納エミリインタビュー【後編】

自分のやっていることが皆さんに受け入れられ始めて我が道を進めています。

1980年代のニュー・ウェイブやテクノポップに、アイドル歌謡のエッセンスをまぶしたかのような楽曲と、端正な顔立ちからは想像もつかないコミカルなダンスパフォーマンスで、ライブアイドル界隈で俄かに注目を集めている加納エミリ。

2019年は精力的にアイドルイベントに出演する一方で、2月13日に初7インチ『ごめんね c/w Been With You』をリリース、同日に新宿motionで行った初の主催ライブも満員御礼と、ますます勢いを増している。

インタビュー後編は、アイドルを始めた理由や、注目を集めるきっかけなどを中心に、今後の展開も語ってもらった。

――アイドルに興味のなかった加納さんが、どうしてアイドルになろうと思ったんですか。
加納 いろいろ試行錯誤をして、アーティストだと自分の100%を出せる表現ができないだろうと思ったんです。アイドルは受け口が広いというか、特に女の子のアイドルはある意味、何でもありじゃないですか。そこで面白いことをしたら、オタクの方たちも受け入れてくれるんじゃないかなって。自分のやりたいことはアイドルのほうが近いんじゃないかってことで始めました。

――それまでアイドル現場に行ったことは?
加納 全くなかったです。アイドルになったのに、アイドルのことを全く知らない状態でした。もともとアイドルの楽曲も聴いてなかったですからね。「ケチャ」って言葉も最近知りました。

――ソロ活動を始めた当初は、ライブハウスに音源を送っていたそうですね。
加納 何のツテもなかったので、そこはオールドスタイルで(笑)。渋谷、新宿、下北沢をメインに、いろんなライブハウスに送りました。なかなか返事は来なかったですけど……。返事がきてもブッキングのノルマが高くて無理だったりして。最初のライブなんて一人も私のお客さんがいなくて、会場には他の演者さんと、演者さんの友達ぐらいしかいませんでした。実質ゼロに近くて、絶望的な状況からスタートしました。それでも幾つかライブに出ていたら、地下アイドルのイベンターさんに声をかけて頂いたりもして、徐々にライブ本数も増えていったんですけど、全然人気はなかったですね。

――加納さんはウケを狙っているのかなと感じるような奇妙なダンスが独特の個性を放っていますが、振付も自分で考えているんですよね。お手本みたいなものはあるんですか。
加納 中国に日本でいうラジオ体操みたいな、早朝に大きな公園でやるダンスがあるんですよ。それをネット動画で観て、「この動きキモいな」と思ったものを最初はダンスに取り入れていました。

――キモさを重要視していたんですか! 普通は可愛さを優先するものじゃないですか。
加納 そもそも可愛いアイドルは目指していなかったですからね。

――自分で振付を考えるソロアイドルも珍しいですよね。
加納 少数派だと思います。しっとりと歌う方が多いですしね。

――動員が増えたきっかけはあったんですか。
加納 去年9月に、ミア・ナシメントちゃんと対バンした時にプロデューサーの矢舟テツローさんがいらっしゃって。相変わらず私のお客さんはゼロだったんですけど、矢舟さんが私のライブを動画に撮ってツイッターにアップロードしてくれたんです。それが一部の間でバズってから、いろんな人に声をかけられるようになって、徐々にお客さんも増えていきました。

――アイドルグループのSAKA-SAMAと対バンで一緒になることが多いですよね。2月13日の主催ライブでもゲストで出演していましたし。
加納 今、私がすごくお世話になっている「なりすレコード」主宰の平澤(直孝)さんと、SAKA-SAMAさんの運営をしている屑山(屑男)さんが昔から仲が良くて、その縁でSAKA-SAMAさんとのツーマンライブにお誘いを頂いて、それからご一緒することが多いですね。そもそも平澤さんも矢船さんのご紹介で知り合ったので、人の縁には恵まれています。

――今年10月に1stEP『EP.1』をリリースしたのは、どういうきっかけだったんですか。
加納 私の中で先入観があって、音源を出すなら完全な状態で出さなきゃいけないって思い込んでいたんです。それで、ずっと音源を出していなかったんですけど、あるファンの方から「音源で聴きたい」って言って頂いたのがきっかけです。その方が「気楽に出していいんだよ」って言ってくれて、すぐに自宅でレコーディングをして2週間後に出しました。

――すごいスピード感ですね。その次にリリースしたのが7インチというのも渋いです。
加納 7インチは平澤さんからのお誘いです。去年の11月に提案して頂いて。今回はジャケットもプロの方に制作して頂きました。ちゃんとしたレコーディングはレコード会社に所属していた以来だったので新鮮でしたね。

――何も音源がない時は、物販はどうしていたんですか。
加納 チェキだけでした(笑)。最初はファンがいなかったので、待ちぼうけ状態で心が折れかけました。

――とはいえ、ほぼほぼ一人でやってきたのはすごいですよ。昨年末からメディアで取り上げることも増えましたが、実感として人気が出る速度はいかがですか。
加納 思ったよりも早いですね。もっと時間がかかるのかなと思っていました。わりと素直な性格なので、レコード会社にいた時は、言われたことを受け止めていたんですけど、それで頭がパンクしそうになりました。今は自分のやっていることが皆さんに受け入れられ始めて、やっぱり間違ってなかったんだって我が道を進めています。

――今後のビジョンを教えてください。
加納 現在リリースプロジェクトを進めていて、プレスCDで3枚リリースして、11月にフルアルバム、12月にワンマンをやろうと思っています。2020年には福岡、名古屋、関西など、地方でもライブをやりたいですね。あと今後もアイドルとして活動していきますけど、アイドルの現場以外にも出ないと先がないと思うので、そこも出られるように頑張りたいです。

取材・文=猪口貴裕 写真=石川真魚

(商品情報)
加納エミリ『ごめんね c/w Been With You』
価格:1,500円+税』
品番:NRSP-755』
発売元:なりすレコード』
仕様:7インチ・レコード』

猪口 貴裕

北海道出身。出版社勤務を経てフリーライターに。エンタメ系を中心に様々な媒体で節操なく寄稿。アイドル誌やゲーム誌の編集にも携わる。「LADY SOUL」主宰。