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怪談社が贈る新たなスタイルの怪談会 怪談酒宴「雛」イベントレポート

当サイトでも告知していた通り3月3日、阿佐ヶ谷駅北口にあるBar TABASAにて、初のLADYSOUL主催イベントとなる怪談酒宴「雛」が開催された。

「怪談会」という言葉に耳馴染みがない方にとっては、なんとなく湿っぽくて薄暗く、参加者も男性が多いイメージがあると思う。しかし近年では怖い話を好んで夜な夜な各地の怪談会に足を運ぶ女性が増加、怪談会の雰囲気も変わりつつある。

今回の出演者である怪談社の上間月貴氏と糸柳寿明氏は、今もっとも注目を集めている気鋭の怪談師である。

日本各地での怪談イベントやテレビ出演と、多忙を極める二人だが、十年以上に渡って変わらず真摯に怪談と向き合う姿が愛される所以なのだろう。

当日は生憎の雨となったが、入り口には開場前から並ぶ参加者の姿が見られ、会場内に所狭しと並べられた椅子は来場者で埋め尽くされた。来場者の半数以上が女性で、テレビを通じて怪談社を知って来場したという客もいた。

イベントは、二人の冗談交じりの軽いトークから始まり、上間月貴氏(写真左)が中古のバイクと以前の持ち主にまつわる怪談を語り始めると一気に会場は静まり返る。その後、彼自身がバイクの運転中に危ない目にあった話で再び会場に笑いが沸く。

糸柳寿明氏(写真右)が語る地下鉄のホームで謎の男に「バトンタッチ」をされる奇妙な怪談に、彼らが関西に事務所を構えていた当時に自分を「魔女」と名乗る西洋人が訪ねてきたという「すべらない話」さながらのエピソードなど、会場内には静寂と笑いが交互に訪れる。

「今日はラフな会なので、訊きたいことがあったら何でも聞いてください。」

二人の呼びかけにより、入場時に配られたアンケート用紙に記入された質問が、次々と彼らに手渡される。

質問の内容は「二人が出会った時の第一印象は?」「好きな物と嫌いな物を教えてください」などのプライベートな質問から、「怪談師になるにはどうしたら良いか?」「怪談を語る上で大切なことは?」などの怪談にまつわる真剣な質問まで様々で、その都度二人の息の合ったトークで答えが返されていった。

後半は、客席の椅子を取り払い、スタンディングでの懇親会形式のトークとなった。
怪談会の常連客や初参加の客、遠方からきたファンまで上間氏と糸柳氏がまんべんなく声を掛けて回る。たいてい、こういった場では他の誰とも話をできずに孤立してしまう来場者の姿が目に付いたりするものだが、不思議と怪談酒宴ではそういった姿は見られなかった。
初対面の者同士でも熱心に怪談について語り込んでいる様子すら窺える。
「怪談」という特殊な趣味を持つ者同士だからこそ、話し合える喜びも一層増すのだろう。そして、そういう懐の深い空間を作り上げているのが怪談社の彼らなのは言うまでもない。

夜が更けても談笑の声は絶えず、会は終電近くまで続いた。
怪談を好む人々が杯を傾けて、時間も忘れて話し合う姿を会場の片隅で眺めながら、私は静かな幸福感に包まれていた。長年怪談を愛してきて良かったと思う。

大きな会場で真剣に耳を澄まして聴く怪談会ももちろん良いが、和気あいあいと話し合える気軽な怪談会も大切だ。怪談とはそもそも気軽なものなのだから。

今後もLADYSOULでは怪談酒宴を開催していくようだが、「ちょっと飲みに行くついでに怖い話聞いてくる」ぐらいに畏まらず気軽に足を運ぶ参加者が増えれば良いと思っている。次回の開催に期待は高まる一方だ。
(文=大谷雪菜)

※次回の「怪談酒宴」は6月を予定しております。

大谷 雪菜(Yukina Ohtani)

福島県生まれ。第3回『幽』怪談実話コンテスト優秀賞。共著に『怪談実話NEXT』等。夜な夜な本とお酒に溺れながら文章や漫画を描いているスナック女。