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引退を考えるまで追い詰められた末に、新レーベル「よいレコード會社」を設立 星野みちるインタビュー【後編】

何もできない時期があって、気持ちもどん底まで落ちました

今年、新レーベル「よいレコード會社」を立ち上げた星野みちる。インタビュー前編では第1弾シングル『逆光』制作秘話を語ってもらったが、後編では前作『黄道十二宮 12 signs of the zodiac』リリースから新レーベル「よいレコード會社」設立までの辛かった日々を振り返ってもらった。

――前作のアルバム『黄道十二宮 12 signs of the zodiac』から、今年36日にリリースしたシングル『逆光』まで、かなりのインターバルが空きましたが、どんなお気持ちでしたか。

星野 不安でした……。1年9か月ぶりでしたからね。それまでのリリースペースが早かったのもあるんですけど、その間は活動がライブしかなかったので気持ちを保つのに必死で、モチベーションも低い時期でした。

――曲作りもしていなかったんですか?

星野 全く作れなかったです。そういう気持ちにもなれなくて、このまま辞めようかとも考えました。ただVIVID SOUNDで月一回の定期ライブはやっていたし、イベントにも出ていたので、そこに来てくれるお客さんだけが心の支えでした。すごくしんどかったです。

――どうして、そこまでインターバルが空いてしまったのでしょうか。

星野 『黄道十二宮』を出してから、「次のアルバムを作ろう」って話も出ていたんです。ただ、みんなが思い描く星野みちる像がバラバラになって、まとまらなくて、リリースが止まってしまったんですよね。それで何もできない時期があって、気持ちもどん底まで落ちました。

――親に相談はしなかったんですか。

星野 親には相談できなかったです。「歌っているみちるが好きと言うぐらい誰よりも応援してくれているし、弱音は絶対に言えなかったですね。それでVIVID SOUNDのスタッフさんに、去年の1118日に目黒のBlues Alley Japanで開催したバースデーライブで「辞めますって発表しようと思いますって相談したんです。

――そこまで思い詰めていたんですか。

星野 かなり気持ちは固まってました。とにかく気持ちが保てなかったし、食欲がなくなってすごく痩せたんです。その痩せた外見が、すごくみすぼらしかったし、この状態で人前に立つのも嫌だったんですよね。それにリリースが途絶えて、徐々に定期ライブのお客さんも減っていて。約1年間、本当に歌を続けたいのか考えた末の結論でした。

――それでも引退を踏みとどまった理由は何だったんですか。

星野 スタッフさんに相談した時に、「せっかく、みちるのバースデーライブでBlues Alley Japanに来たお客さんに、『引退します』って言ったら生きて帰れないよ」って言われたんです(笑)。「だったらVIVID SOUNDの所属は外れるけど、一度自由にやりたいことを楽しくやろうと提案されて、「もうちょっと頑張ってみますと伝えたら、協力してくれる方がたくさんいらっしゃって。それで、だんだんやる気が戻って、バースデーライブはポジティブな気持ちで臨めました。

――そのまま引退じゃなくて本当に良かったです。

星野 危なかった……。

――新しい環境になることへの不安はなかったんですか?

星野 全くなかったですね。サリー久保田さんも「弦楽器と一緒にやったら、絶対に合うよ」って提案してくれて、それで1枚作ろうってことになって『逆光』に繋がっていったんです。アレンジャーの岡田ユミさんも、「みちるちゃんの歌が本当に好き」ってピアノのサポートをしてくださって。他にも協力してくれる方たちがたくさんいたので何も怖いことはなかったです。

――今はやる気のほうは?

星野 もうやる気満々です!

VIVID SOUND時代の全アルバムを振り返る

――せっかくなので、初めて星野みちるさんの曲を聴く方に向けて、VIVID SOUND時代のアルバムを振り返ってもらい、オススメ曲を挙げて頂けますか。まずは2013710日リリースの1stアルバム『星がみちる』。

星野 ずっとフリーで活動していたんですけど、VIVID SOUNDに所属が決まって希望に満ちていましたね。それまで弾き語りだったのが、ポップなアレンジに変わった初めてのアルバムだったので、それまでのファンに受け入れられるのかという不安はありました。実際、半分ぐらいの方は「弾き語りのほうが良かった」って離れていきましたね(笑)。でも半分の方は受け入れてくれたので心の支えになりました。

――VIVID SOUNDでは一貫して、はせはじむさんとマイクロスターの佐藤清喜さんが共同でプロデュースを担当します。

星野 とにかく楽しかった。宇宙っぽい音と、自分の声が合うんだなって発見もありました。特に「私はシェディー」は、宇宙に飛び込んでいくような感覚で歌いました。

――201477日に2ndアルバム『EIEN VOYAGE』をリリースします。

星野 その前に「離して、、、」「楽園と季節風」「雨の中のドリーマー」「恋のファンフェアー」と4か月連続でシングルをリリースして、吉田豪さんだったり、宇多丸さんだったりが「面白いね」って言ってくれたんです。その後のアルバムだったので、いろんな方が注目してくれたのが嬉しかったです。それって私一人ではできなかったことで、佐藤さんとはせさんのチームワークのおかげだし、共同作業で曲を作る楽しさや大切さを感じたアルバムです。

――その中で1曲を選ぶとすると?

星野 いろんな曲調が増えたんですけど、「離して、、、」かな。歌詞に出てくるのが強い女性なので、ライブではカッコ良く歌うのが好きです。

――20141112日には早くもミニアルバム『A/W COLLECTION あなたと私のコレクション』をリリースしました。

星野 「プラネタリウムで待っててね」「川沿いの街」「もう一度déjà vu」と3曲も私が作曲した曲を入れてもらえて嬉しかったです。特に「プラネタリウムで待っててね」は、「きっと佐藤さんが素敵なアレンジをしてくださるんだろうな」って想像しながら作っていました。実際に上がってきた曲を聴いて、「うわ~! すごいー!」って感動しました。

――201592日リリースの3rdアルバム『YOU LOVE ME』は、楽曲提供に高浪慶太郎、奥田健介(NONA REEVES)NEW TOWN REVUE(a.k.a.ドリンクバー凡人会議)、プロデューサー陣にヤン富田、小西康陽と豪華なゲスト陣が参加しました。あと宇宙色がなくなりました。

星野 ジャケットも人間っぽくなって(笑)。それまで、はせさんと佐藤さんの3人で作っていたのですが、ゲストの方々が私の新しい色を引き出してくれた楽しいアルバムです。

――ヴォーカルの幅も広がりましたよね。

星野 たとえば小西さんが書いてくださった「夏なんだし」は、歌詞が独特の世界観で、今まで歌ったことのない曲調で。メロディーも細かく変わるので、歌うのは難しかったけど楽しかったです。

――星野さん自身、曲作りに変化はありましたか。

星野 ありました。それまで自分がディスコ曲を作るなんて思いもしなかったんですけど、「ディスコティークに連れてって」で初めてディスコに挑戦をして。思い入れも強いですし、みんなの影響でできた曲ですね。

――201697日には初めてのカバー・アルバム『マイ・フェイバリット・ソングス』をリリースします。

星野 昔から好きな曲もあるし、初めて知った曲もあるしで、すごく新鮮でした。中でも私の大好きな安室奈美恵さんの「SWEET 19 BLUES」を歌えたのが嬉しかったです。

――安室さんの引退はいかがでしたか?

星野 ショックでしたよ。悲しかったし、信じられなかった。私も一緒に引退かと思いました(笑)。安室さんと私とでは規模が違いすぎるけど。

――この中でオススメ曲は?

星野 The Scootersさんが参加してくださったAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」ですね。

――さすが元AKB48

星野 バンドサウンドで原曲とは全然違う色になっているのが楽しいですし、ライブでやるとお祭り気分でテンションが上がります。

――そして2017621日にリリースした4thアルバム『黄道十二宮』。このアルバムも沖井礼二(TWEEDEES, ex-Cymbals)、かせきさいだぁ、池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)、ブルー・ペパーズなど、バラエティ豊かなミュージシャンが華を添えています。

星野 「今後も歌えるような曲を歌おう」ってコンセプトで作ったアルバムです。若い時しか歌えない曲じゃなくて、幾つになっても歌える曲をやろうって。いろんな方に曲を提供して頂いて、いろんな引き出しを開けて頂きました。ただ、どれも曲の難易度が高かったです。

――ガラッと大人っぽくなったアルバムですよね。その中で1曲を選ぶとすると?

星野 「流れ星ランデブー」ですね。大人な気取った感じの曲で、ビッグバンドのアレンジで歌うのも初めてだったので思い出深いです。

――最後に今後の展望を聞かせてください。

星野 より自分で作詞作曲した曲を増やしていきたいです。今はピアノの弾き語りをメインでライブをやっているので、できる曲が少なくなったんですよね。なので、もっと弾き語りライブに合う曲を増やしたいかな。

――「よいレコード會社」社長としての野望は?

星野 NHKの『みんなのうた』で私の曲を使ってもらいたい(笑)。『逆光』収録の「ロックンロール・アップルパイ」とか合いそうかなって。あと、もっともっと、いろんな人に星野みちるの曲を聴いてほしい。そして今まで以上に応援してほしいです!

(取材・文=猪口貴裕 写真=長澤紘斗)

(ライブ情報)

<毎月開催のワンマンライブ「Pororin

星野みちるが毎月定期的に行うワンマンライブ「Pororin」の開催が決定。

1回の「Pororin」は526日(日)@渋谷7th FLOOR

2回の「Prorin」は629日(土)@渋谷7th FLOOR

<毎月開催の地方ライブ「星野みちる全国ライブ〜観光〜」>

星野みちるが「星野みちる全国ライブ〜観光〜」と題した毎月1回のライブを全国津々浦々で開催。

1回目の「〜観光〜」は6/9(日)栃木県の岩下の新生姜ミュージアム。

2回は大阪を予定。

詳細は公式サイトをご覧ください。

猪口 貴裕

北海道出身。出版社勤務を経てフリーライターに。エンタメ系を中心に様々な媒体で節操なく寄稿。アイドル誌やゲーム誌の編集にも携わる。「LADY SOUL」主宰。