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自然体なスタイルでビッチ女子の日常を綴る異色のラッパー ともビッチインタビュー(前編)

ビッチを楽しんでいることをラップしたら面白いかなと思った

MCバトル番組の人気や、様々なジャンル、スタイルの定着により、隆盛を誇るジャパニーズ・ヒップホップ・シーン。どちらかといえばシリアスな側面ばかりがクローズアップされがちな中、自身が経験してきた女性としての日常を、必要以上に飾らず、ポジティブにラップする「MCともビッチ」。
インタビュー前編では、ビッチラッパーとしての出発点から現在のスタイルの確立までを掘り下げます。

――いつ頃からラップを始めたんですか?
ともビッチ リリックを書き始めたのが2014年だから約5年前ですね。今年で3曲入りの初EP『ともびっちのABC』(2015年4月27日リリース)を出してから4年経ちます。

――なぜラップを始めようと?
ともビッチ ひどい話になっちゃうんですけど……。当時、関係のあった男の子が、スチャダラパーが好きだったんですよ。私はスチャダラパー世代ではないので、『ポンキッキーズ』で見たなぐらいの印象で、それまでちゃんと聴いたことはなくて。そしたら、その男の子がスチャダラパーの自分が好きな曲を集めたオリジナルCD-Rを焼いてくれたんです。

――青春ですね(笑)。
ともビッチ オレベスト的な(笑)。それを聴いたら「おぉー!」と思って。スチャダラパーって何でもありで、内容がない曲も多いじゃないですか。もっとラップって取っ掛かり辛いのかなって思っていたんですけど、こういうのをやっている人がいるんだと。これなら私もやってみたいなと思って、リリックを書き始めました。

――リリックの内容が主にビッチというのが斬新ですよね。
ともビッチ ビッチなことを言っている人ってあんまりいないじゃないですか(笑)。女の子に向けている曲って「失恋しちゃった」とかそういうのが多いけど、「本当はみんな、もっと明るい気持ちで思ってることあるんでしょ?」みたいな。ビッチだけど傷ついちゃったみたいな曲じゃなくて、もっと楽しく生活してることをラップしたら面白いかなと思ったんです。

――失恋ソングを聴いているけど、実際は「やることやってるんでしょ?」みたいな(笑)。
ともビッチ そういうのが面白いかなと思って、ちょこちょこリリックを書いていたら、たまたま友達の紹介で、今一緒にやっているKOITAMAさんっていうトラックメーカーの人と会う機会があったんです。その時に「こういうのを書いていて、いずれはラップをやってみたいんですよ」ってリリックを見せたら、「いいね。こういうことをやっている人いないから一緒にやろう」って言ってくれて。それでトラックを作ってくれて、初めて録音したものを「術の穴」っていう音楽レーベルのコンピレーションアルバムの楽曲募集に応募したら受かったんです。それが『HELLO!!!vol.8』(2015年2月25日リリース)で、KOITAMAさんプロデュースの「SOS FROM SNS」という曲で参加したのがラップを始めるきっかけでした。

――ライブよりも先に音源で世に初めて出たんですね。
ともビッチ スチャダラパーのオレベストを聴いたのが9月ぐらいで、書いてみよう、録ってみようで、12月ぐらいにそのコンピに入るのが決まったので、その間、3、4ヶ月ぐらいですかね。けっこう、とんとん拍子です。その公募に受かった時は、すごく嬉しかったです。やっぱりみんなこういうのを求めてるじゃんって(笑)。

――私のやり方もアリなんだと。スチャダラパーに出会うまでヒップホップは一切聴かなかったんですか?
ともビッチ そうですね。その頃は相対性理論が流行っていて、そういうポップな曲を聴いてました。

同じ市場で個性が被らないように同性のラップはよく聴く

――リリックは、ほぼほぼ実体験なんですか?
ともビッチ その質問、すごく聞かれるんですよ。

――まあ気になりますよね(笑)。
ともビッチ 7、8割ぐらいは実体験です。リリックを書き始めた時はラップなんて全然知らなかったので、ひどい文章になるわけですよ。KOITAMAさんにリリックを送ると、「そこまで言わなくてもいいだろう」って添削されて返ってきて。

――これはやり過ぎだと。
ともビッチ だいぶ削られて戻ってきて、「あれ?」って。そのおかげで、だんだんコツが分かってきて、自分で言葉を減らしていって、韻が踏みやすくて、自分が訴えやすい内容にして。最近は添削なしで、ほとんど自分でやっています。

――自分の中でスタイルが出来上がってきたんですね。最近は他のヒップホップも聴くようになったんですか?
ともビッチ 聴きます。海外のヒップホップは流し聴きなので、そんなに名前は覚えてないんですけど、日本人だったら活動を始めたばかりの頃にTokyo Health Clubとライブで一緒になることが多かったので、よく聴いています。

――同性のラップは?
ともビッチ 同じ市場で生きていくためには個性が被らないように、同性はすごく聴きます。「よし! ビッチキャラいない」みたいな(笑)。

――女性でラップをやっている人も、ここ数年は増えましたよね。
ともビッチ 確かに今は女の子のラッパーも多いですけど、女の子がやってるラップってガチガチでやっている人ってあんまりいないじゃないですか。ラップを混ぜつつ歌いつつみたいな人だと泉まくらさんが有名ですけど、個人的にはchelmicoさんなんかを参考にさせてもらっています。

――ラップの乗せ方で他のラッパーを参考にすることはありますか?
ともビッチ あまり意識しないようにしています。

――むしろ他とは違う風にしようと。
ともビッチ 始めた頃は上手になりたくて海外のラッパーも聴いたし、日本だとPSGとか上手い方を聴いたんですけど、「ともビッチは下手くそな感じの方がいいよ」みたいなことを周りから言われることが多くて。

――あまりスキルを重視するなと。
ともビッチ そうですね。私自身、小手先で慣れた感じよりかは、リリックで勝負したいって気持ちがあるので。

――スキル主義にならないことで、逆にリリックが伝わりやすいっていうのはあるかもしれないですね。
ともビッチ それは意識してるかも。ライブで上手なのは聴いていて気持ちいいんですけど、言っていることが分からないと、あまり響かないところがあって。ちゃんとリリックが聴こえるようにしていますね。


――楽曲制作はトラックが先ですか? それとも大体リリックの内容が決まっていて、それに合わせて?
ともビッチ 最近はどちらかというと、リリックのイメージがあって、トラックをもらう方が多いです。

――ある程度こんな感じの曲をやりたいと伝えて、一緒に作業する流れですか?
ともビッチ そうです。テーマを伝えてから何曲か送ってもらって、その中でイメージに合ったトラックを選んで。

――トラック提供は何人くらいの方にオファーしているんですか。
ともビッチ 1stアルバム『らん・らん・らんし』(2018年3月3日リリース)だと、KOITAMAさん、MAY24さん、ishizukakeiさん、chop the onionさん、首領・チンジャオさんの5人です。このアルバムを作った時は、いろんな人に自分から声をかけました。ishizukakeiさんはKOITAMAさんの友達だったんですけど、お互いに面識はなくて。でもいいなと思っていたので、会った時に「曲作ってください」ってお願いしました。chop the onionさんもKOITAMAさんが紹介してくれて、とても曲が良かったので、私から連絡して曲を作ってもらって、マスタリングまでしてもらいました。

――自分から積極的に発注しているんですね。
ともビッチ 5人の中では首領・チンジャオさんだけ会ったことがないんです。首領・チンジャオさんはtwitterで知って、トラックが良いなと思ったので連絡を取って、何曲か送ってもらって、その中から1曲を提供してもらいました。

後編では、1stアルバム『らん・らん・らんし』収録曲を1曲ずつ解説してもらいながら、ユニークかつ独創的な世界観に迫ります!
(取材・文=牧野文人 写真=長澤紘斗)

(商品情報)
らん・らん・らんし
税込価格:1,200円
2018年3月3日リリース
All produce : KOITAMA
Mastering Engineer : chop the onion from OMAKE CLUB
Art Work :ともビッチ, 平川タケシ (Photo), ょしめぢ~ちゃす(Illustration)

収録曲:

1.Intro prod.by KOITAMA
2.S.B.Y.R prod.by MAY24
3.#フォトジェニック feat.& prod.by KOITAMA
4.いつものつづき feat.猫まみれ太郎 prod.by chop the onion
5.ドライブ feat.& prod.by ishizukakei
6.ともビッチのテーマ prod.by chop the onion
7.Tinder prod.by KOITAMA
8.真夜中 prod.by 首領・チンジャオ from SS.syng
9.Outro prod.by KOITAMA

牧野文人

東京都出身。出版界の片隅に生息する何でも屋。ゆるく生きるがモットーです。