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『らん・らん・らんし』収録曲から垣間見える独自の世界観 ともビッチインタビュー後編

アーバンでキラキラした楽曲にしようというイメージが出発点

自身が経験してきた女性としてのリアルな日常を、必要以上に飾らず、ポジティブにラップする「MCともビッチ」。インタビュー後編では、2018年に発売されたEP『らん・らん・らんし』の楽曲を紐解きながら、オリジナリティ溢れる世界観に迫ります。

──KOITAMAさんによるIntroで幕を開け、2曲目が「S​.​B​.​Y​.​R」。これはYou TubeMVとして上がっている曲です。

ともビッチ 曲提供してもらったMAY24さんは、私が恵比寿のBATICAでやったライブを観に来てくれていて、その時に声をかけてもらったんです。彼もイベントをやっている方で、「一緒にやりませんか?」と誘われてライブしたのがきっかけで、そこからトラックを作ってもらってレコーディングしました。

──キラキラした感じのダンスミュージックですよね。

ともビッチ 作ってもらう時に、こういった雰囲気でというイメージは伝えました。『らん・らん・らんし』は全体的に、ちょっとアーバンでポップな感じにしたかったんです。

──MVのロケ地は渋谷ですか?

ともビッチ 渋谷で撮りました。ラブホ街ばっかり歩かされて(笑)。自分で選んだ訳じゃなくて、なぜか道玄坂の方に行くみたいな。イメージとしてはMAY24さんとイベントをやっていたのが、いつも渋谷だったので、それなら「渋谷」をテーマにやろうと。渋谷のクラブで遊んで、男の人と出会って、そのままホテルに行って、次の日は覚えてなくて解散、みたいなイメージが私の中であるんですけど、それをポップに歌ったら面白いかなと。

──その夜に出会ってからの、「ヨロシク、じゃあね」的な(笑)。

ともビッチ クラブに行っている友達の話を聞くと、「そういうことになっちゃったんだけど、連絡先とかも交換してないし、やらかしたわ」みたいなことを言うんだけど、全然そんなことないじゃんって。「もう最高!」ってハイタッチして帰ろうというのが私としてはあるので(笑)。仕事が終わって、クラブに行って、最高の夜、みたいに捉えて欲しいなということで、キラキラした感じの曲にしました。
元々このEP5曲入りぐらいで出そうかなと思っていたんですよ。ただ、この「S​.​B​.​Y​.​R」が早めに出来て、アルバム全体のイメージが湧いたんです。それで9曲入りの今の形になりました。

──次が「#フォトジェニック」ですが、これはどういった内容でしょう。

ともビッチ 収録曲の中では珍しいケースなんですけど、KOITAMAさんからこのテーマでやろうという提案があった曲ですね。内容的にはフォトジェニックな写真を撮ってSNSに上げている人にもの申すと行った内容で(笑)。

──日頃から思っていることですか?

ともビッチ ですね。なんでお洒落さんと繋がりたいんだろうな、タグ付けとかどういう意味なんだろうっていう。

──そういう女友達は周りにいないんですか?

ともビッチ いっぱいいます。

──なのに否定的なことをラップするとは(笑)。

ともビッチ いいんじゃないですかね(笑)。世間的な風潮にもの申してる訳ですから。

──KOITAMAさんからの反応はいかがでしたか?

ともビッチ 「ビッチ感もありつつ、フォトジェニックにも沿っていていいね」って。ただの皮肉になっても面白くないですからね。実は「フォトジェニック」は、最初にもらったトラックと全然変わっているんですよ。最初は淡々としていて、もっとゆっくりした感じでした。サビも違いましたからね。一回録音も終わっていたんですけど、トラックが差し替えになって、歌詞もそれに合わせて直しているんです。結果的にすごく良い曲になりました。

──トラックメーカーとキャッチボールのように作業を進めていく作り方はよくあるんですか。

ともビッチ トラックメーカーの人からお題を最初にもらってやるというのは珍しいですね。基本、自分でお題を決めているので。

──普段からテーマは書き留めているんですか?

ともビッチ 雑談をしていて面白かったくらいのことでも書き留めますし、フッと思いついたものも書き留めます。

──続いては猫まみれ太郎さんをフィーチャリングした「いつものつづき」。

ともビッチ トラックをもらった時点では、まだ猫まみれ君に会っていなかったので1人でやろうと思っていた曲です。たまたまライブの時に猫まみれ君に会って、この曲がまだ進んでいなかったのもあって、「一緒にやらない?」と私が声をかけて始まりました。この曲に関しては元々テーマが決まっていなかったので、「こういうテーマで2人でやらないですか?」と提案して進めていきました。初めて会ったのがライブハウスのイベントだったので、そういう場所で声をかけたいけれどかけられない男子と女子っていう話が面白いかなと。

──気になっているけど、たまに目が合うだけという感じの。

ともビッチ そうそう。私はどちらかといえば出る側じゃないですか。お互い気にはなっているけど、結局お客さんの方は好きなアーティストに話しかけるのが気まずくて、始発で帰って「あ~あ」みたいな(笑)。終着点がない感じも面白いかなと思って作りました。

──お互いの立場からの掛け合いみたいな作りですよね。先にともビッチさんが入れたものを、猫まみれさんに渡して、みたいな流れですか?

ともビッチ まさにそんな感じですね。この曲はサビを猫まみれ君が提案してくれたんですが、メロディがあるというよりは、ダラダラ掛け合いが続くようにしています。

──男性のラッパーをフィーチャリングして、異性の目線が入るのはこの曲が初めてですよね。また男女に限らず、誰かを招いての曲作りは考えていますか?

ともビッチ 実は今作っているEPがあるんですけど、その中で1曲考えています。ちゃんとラップをやったことがない女の子を誘ってみたら面白かったんですよ。その子が今ではラップにハマって、ラッパーになりつつあるので一緒に何かやりたいんですよね。

──アドバイスもしてるんですか?

ともビッチ 「リリックを書くのが恥ずかしいです」って言うので、「そんなことないですよ。何でもいいんですよ」って言うぐらい(笑)。

──それは楽しみです。5曲目は「ドライブ」。

ともビッチ この曲はishizukakeiさんにトラックを作ってもらいました。車に乗っている時に聴いてもらえる曲があるといいなと思って書いた曲です。

──夜のドライブに合うような?

ともビッチ そんなイメージです。トラックがこれまでやったことがないタイプですごく難しかったです。全然出来なくてKOITAMAさんに1回相談しました。

──苦労したのはラップの乗せ方とかですか?

ともビッチ そうですね。ishizukakeiさんとやるのも初めてだったので、フックは何回も変わっていきました。元々そんなにラップが上手くないので……。もっと上手に乗せられるはずだっていう気持ちがあったんです。1回録ったものに自信がなかったのでKOITAMAさんに聴いてもらったら、「全然いいと思うよ。これでやってみなよ」と言ってもらったんですけど、その後も何回か録り直しました(笑)。

──次の「ともビッチのテーマ」は、「いつものつづき」と同じくchop the onionさんがトラックメイクをしています。

ともビッチ この曲は別のラッパーとやるはずで、自分のパートの録音は終わっていたんですよ。それがなくなってしまった時に、タイトルに自分の名前が入っていて、ライブでも自己紹介的に使えるような曲が欲しいなと思っていたこともあって、1回出来ていたものを全部変えて作り直したんです。

──名刺代わりの1曲ですね。

Tinder」のリリックを書くために約30人の男性と会いました

──「Tinder」はKOITAMAさんがトラックメーカーです。

ともビッチ これは「Tinder」ってタイトルの曲を絶対に作りたいと思って始まった曲です。

──「Tinder」って何ですか?

ともビッチ 出会い系アプリ(笑)。

──ともビッチさん自身、使っていたんですか?

ともビッチ 今はやっていないんですが以前は激しくやっていました。Tinder狩りをしてましたね(笑)。

──いつ頃ですか?

ともビッチ 2017年ぐらい。Tinderって今は下火なのかな。まだやってる人もいるのかな。ただ当時はすごく流行っていたんですよ。他にも出会い系アプリが出てきた時期で、すごく面白いなと思って。これは絶対リリックに出来ると。まだ誰もTinderのことをリリックにしていなかったですしね。

──誰かがリリックする前に書かなきゃと(笑)。

ともビッチ この畑は譲らないぞと(笑)。それでKOITAMAさんに「Tinderの曲をやりたいんですよね」って相談したら「早くやった方がいいよ」と。それで勉強のため、実際に利用して……

──論より証拠ですね。実際、何人ぐらいと会ったんですか?

ともビッチ 直接会ったのは30人ぐらい(笑)。

──勉強熱心ですね~(笑)。

ともビッチ かなり勉強しました。ただ、10人ぐらいと同時に連絡したり、やり取りがしつこいな~とかもあったりして大変でしたね。ひっきりなしに連絡がくるんですよ。

──この曲には現場で勉強した成果が詰まっているんですね。

ともビッチ 詰まってると思います。Tinderをやる時のアドバイスも盛り込んでいますからね。たとえば「写真は動物と一緒に撮った方がいい」とか(笑)。

──Tinderとタイアップして欲しいぐらいですね。

ともビッチ そうなんですよ。ちゃんと「Tinder最高!」と言ってるし、曲を送ろうかなと思ったぐらいで。

──8曲目の「真夜中」ですが、トラックメイクの首領・チンジャオさんには、どういう経緯で作ってもらうことになったんですか。

ともビッチ 首領・チンジャオさんのことはTwitterで知ったんですけど、精力的にトラックを作ってる方だったので面白いなと思って、自分からダイレクトメールで連絡させてもらいました。

──アグレッシブですね。実際に出来上がった曲はどういった内容ですか?

ともビッチ たぶん誰も気付いてないんですけど、不倫がテーマなんです。なのでそれに合うトラックを選んで作っていきました。

──大人の危険な恋愛的な?

ともビッチ 「不倫流行ってる?」「今も流行ってる?」っていう(笑)。

──不倫は流行廃りじゃないですけどね(笑)。ちなみに不倫経験はあるんですか?

ともビッチ 不倫は私のルールとしてないですね。

──ビッチなりのルールがあるんですね。

ともビッチ 3つあります。「不倫はしない」「セフレや遊びの人を絶対に好きにならない」「相手に干渉しない」です。

──なるほど。深入りはしないってことですかね。

ともビッチ そうですね。不倫は面倒くさいことになりがちなので。

──なぜそれをテーマにしようと?

ともビッチ なんでですかね(笑)。そういう曲もあったらいいかなと。

──不倫経験がないということは、リサーチなどはしたんですか。

ともビッチ 若干しました。けっこう不倫してる子っているんですよ。哀しい20代を彷徨っている……

――彷徨っているんですか(笑)。

ともビッチ 不倫している子って、「ダメだよ」と言っても全然聞かないんですよね。「相手と別れてくれるから大丈夫」って絶対的な自信があるんです。「もっと有効に時間を使った方がいいよ」って言っても、「酷い! そんなこと言わないで」ってなっちゃって。その子自身はそれで幸せなんだなって思うことにして、明るい不倫の曲を作ろうと。

──ではこの曲は、ちょっと外から観察した感じの視点ですか。

ともビッチ そう考えると、実体験ではない曲になっていますね。

──リリックに関して、あまりウェットにならないようにという意識はあるんですか。

ともビッチ それはすごくあります。恋愛のことで、ずっと泣いてるんじゃなくて、「今日もありがとう。まいっか。楽しかった。は~」みたいな(笑)。

──『らん・らん・らんし』をリリースして、活動に広がりは出ましたか?

ともビッチ ライブに呼んでもらえることが増えました。全然知らない人からライブに誘ってもらったり、「CD欲しいです」と言ってもらったり。

──新しい音源は制作しているんですか?

ともビッチ 今EPを作っていて、3曲入りぐらいにしようかなと考えています。まだ形は見えてないですが、トラックは決まりつつあります。

──どんなイメージになりそうですか。

ともビッチ エモーショナルで、やや重めな感じ。『らん・らん・らんし』よりは少し落ち着いた感じにしようかなと思っています。

──リリックの内容も変化しそうですか?

ともビッチ そうですね。婚活問題なども取り込んでみようかなと。

──キャリアと年齢に合わせてリリックも変化する訳ですね。

ともビッチ そういう要素もそろそろ入れていこうかなと。まあ砕けた内容にはなると思うんですけどね(笑)。

(取材・文=牧野文人 写真=長澤紘斗)

(商品情報)

らん・らん・らんし

税込価格:1,200

201833日リリース

All produce : KOITAMA

Mastering Engineer : chop the onion from OMAKE CLUB

Art Work :ともビッチ, 平川タケシ (Photo), ょしめぢ~ちゃす(Illustration)

収録曲

1.Intro prod.by KOITAMA

2.S.B.Y.R prod.by MAY24

3.#フォトジェニック feat.& prod.by KOITAMA

4.いつものつづき feat.猫まみれ太郎 prod.by chop the onion

5.ドライブ feat.& prod.by ishizukakei

6.ともビッチのテーマ prod.by chop the onion

7.Tinder prod.by KOITAMA

8.真夜中 prod.by 首領・チンジャオ from SS.syng

9.Outro prod.by KOITAMA

牧野文人

東京都出身。出版界の片隅に生息する何でも屋。ゆるく生きるがモットーです。